淡路島リベンジ 1日目 その1

2018年5月3日 午前9時30分、私はキックボードとバックパックを抱えて、ジェノバラインに乗り込んだ。この日は風が強いせいか波が高く、船が大きく揺れている。

これまで何度もジェノバラインには乗ったが、こんなに揺れるのは初めてだ。船が激しく上下に揺れるたび、外国人観光客が歓声をあげている。たった15分ほどの乗船なのだが、上下に揺さぶられて少し気持ち悪くなってきた。

淡路島リベンジ 準備編はこちら。

強風との戦い

港に近づくにつれ揺れも収まり、無事岩屋へ降り立つことができた。いよいよ淡路島リベンジのスタートである。キックボードを組み立て、写真を数枚撮ってから出発! 今日中に吹上浜まで行かなければならないのに、すまたんを見てのんびりしていたせいで、もう10時だ。急がなければ。

8ヶ月ぶりのキックボードだが、15分ほど走ると感覚を取り戻すことができた。蹴り足を左右交互に替えることで、脚への負担を分散させるわけね、あーなるほど。しかし、遅れを取り戻そうと走らせるものの、なかなか前に進まない。キックボードの大敵ツートップのひとつ、強烈な向かい風である。必死に蹴っているのだが、風圧に押しもどされるのを感じる。

長時間キックボードで走る場合、一番大事なのはできるだけ惰性で走らせることである。惰性で走っている間、足をボードのうえで休ませるのが大事で、そうしないとすぐに脚が疲れてしまい、走れなくなってしまう。ところが、向かい風が強いと、すぐに惰性走行のエネルギーを奪われてしまい、脚で蹴り続けなければ進めなくなってしまう。この風には午前中いっぱい悩まされることになる。

出だしは順調! しかし・・・

岩屋から洲本まではアップダウンも少なく、平坦な道が多い。しかし、その先には淡路イチ最大の難所といわれる立川水仙郷が控えている。できるだけ前半で時間を稼いでおきたいところだ。向かい風を受けながらも快調に飛ばし、前回暑さにダウンして休憩していた場所を、次々と走り抜ける。やはり、気候がよければこれだけペースアップできるのだ! いや焦ってはいけない。淡路イチはまだ始まったばかり。オーバーペースは禁物なので、1時間に1回は休憩をとりながら進むことにしよう。

ちょうど最初の1時間で、前回ダウンした地点に到達したので、休憩をとることにする。前回は暑さにやられてバテバテだったが、今回は余裕がある。GPSを確認すると、12kmも進むことができた。正直、15kmくらいは行くかと思ったが、まあ風が強いのでこんなものだろう。風が収まれば、15kmくらいいくかもしれない。自販機で8ヶ月ぶりのいろはすを購入し、半分ほど飲んだところで出発する。

相変わらず風が強く肌寒いくらいだが、そのくらいがちょうどいい。ゆるやかなアップダウンを順調に進んでいく。この調子だと昼ごろには洲本に着けそうだぞ。ひょっとしたら、今日中に一周できちゃうかも? なんてバカなことを考えていたら、異変に気付いた。なんか、疲れてきたのだ。もう1時間半もキックボードに乗っているのだから、疲れて当たり前なんだが、なんか思ってたよりも疲れている。まだ走り始めたばかりだから、身体が慣れてないのかもしれない。やっぱり、事前に走りこんでおくべきだったかなーと思いながら、2回目の休憩をとった。GPSを確認すると、走行距離は約9km。

時速9km!? 思わず目を疑ったが、もう一度確認しても9kmである。ペースは落としていないつもりだったが、思ったよりも距離が伸びていない。疲れのせいかもしれないが、この調子では吹上浜に着くのは19時頃になってしまいそうだ。時刻は12時。前回は厚さにやられて食べ物が喉を通らなかったが、今回は食欲がある。コンビニで、おにぎり一個、たまご焼き、スムージーを買い、外の空いているスペースで食べさせてもらう。うん、食べたら元気がでてきた。とりあえず洲本をめざそう。

行くべきか、行かざるべきか

さらにキックボードを走らせること1時間、あっさり洲本に到着。時刻は13時。前回あれだけ苦労したのがウソのようだ。前回1泊させてもらったベンチに腰掛け、今後の作戦を考える。吹上浜キャンプ場まで、残り約41km。これまでのペースなら、17時には到着できる計算だが、途中には立川水仙郷があるので、ペースダウンは必至だ。そのあとの海岸線は走りやすいとはいえ、このまま風が続くとさらにペースダウンする可能性もある。もし吹上浜キャンプ場にたどりつけなかった場合、その辺の道端で夜を明かすことになる。それは構わないのだが、せっかくファイヤーボックスまで持ってきたのにBBQできないのは辛い。

もうひとつの不安点は、思ったよりも疲れていることだ。いや、疲れているという表現はもはや正確ではない。脚が回らなくなってきているのだ。果たして残り41kmを走り切れるのだろうか。今回の淡路島リベンジは、体力的には余裕だと思っていたのだが、間違っていたと認めざるをえない。昨年の淡路島一周では、暑さで停滞したため、結果的に体力の消耗が抑えられていただけなのである。それを「余裕がある」と勘違いしてしまっていた。停滞せずに進めば、当然進んだ分だけ疲れるのである。

さて、どうするか。ここをキャンプ地とすれば、前回と同じ日程になり、ずいぶん楽になる。ショートカットしなければ「キックボードで淡路島一周」という目標も達成できる。しかし、である。現在13時、このまま先に進めば、今日中に吹上浜キャンプ場にたどりつける可能性もある。もしたどりつけたら、2日で一周するチャンスは残されるのに諦めてしまうのか。諦めてしまったら、来年の今頃にはまたチャレンジしたくなるに違いない。そんなに何回もキックボードで淡路島一周なんてできるか!! もうアラフィフなんだぞ!! これが最後のチャンスと思って、決行だ!!

なぞのパラダイスを越えて

そうと決まったらすぐに出発だ。気合をいれなおしてキックボードを蹴る。洲本市街を抜け、立川水仙郷までは海沿いの走りやすいルートが続く。ここで時間を稼いでおきたい。前回はこのあたりで写メを撮ったり、鹿の角を拾ったりしたのだが、今回はそんな余裕は全くない。とにかくキックボードを蹴り続ける。幸い、午前中悩まされた強風は弱まっていて、走りやすくなっている。よし! これならいける!

1時間ほどで立川水仙郷の入り口に到着。ここには「立川水仙郷」の看板がないのでちょっとわかりにくい。代わりに「なぞのパラダイス」という手書きの看板の方向に進まないといけない。「なぞのパラダイス」とは、観光地によくある秘宝館のようなもので、探偵ナイトスクープにも登場したことがあるらしい。「ハーハー笑うところ」という謎なキャッチフレーズが気になり、行ってみたかったのだが、前回はそんな余裕がなく断念したのだ。どうやら今回も無理っぽい。

いよいよ淡路イチ最大の難所、立川水仙郷の上りが始まる。当然、キックボードでは上れないので、押して上ることになる。最大の難所とはいえ、舗装された道路である。その辺の山を登ることにくらべたら楽勝だ。時間はかかってもゆっくり歩いていけばいい。これまで、キックボードの地面を蹴る動作にすっかり慣れてしまった脚は、歩くのにもぎこちなくなっているが、すぐに慣れるだろう。

ところが、10分ほど進んでみると、どうも様子がおかしい。両ふとももに違和感があるのである。筋肉が張って力が入らない。今までに味わったことのない感覚。どうやら、これまで4時間以上キックボードで走り続けた結果、ふとももの筋肉が限界にきているらしい。まだ先は長いのに、ここで停滞したら2日で一周は絶望的だ。キックボードに寄り掛かるようにして、ジリジリと上っていく。

30分ほど歩いて、ようやく山頂(?)についた。見ると、「なぞのパラダイス」とデカデカ書かれた巨大なゲートがあり、受付らしきところに人がいる。前にきたときは人っ子ひとりいなかったが・・・ いつのまにこんなデカいゲートを建てたのか? それほど人が来ているようにはみえないが・・・ なぞのパラダイス恐るべし。

巨大ゲートを横目に水分補給を済ませ、疲れた脚を休ませる。ここからしばらく下りのあと海岸線を走るので、ペースも上がるだろう。まだまだ先は長い。10分ほど休んですぐに出発する。

キックボードで下り坂を走るのは楽なように思えるが、実際はそうでもない。いや楽は楽なのだが、それは緩やかな下り坂に限られる。急な下り坂の場合、スピードコントロールが大変なのだ。なんせキックボードのブレーキは貧弱で、回転するタイヤを押さえつけて減速するという原始的なものなので、急制動はできない。したがって、スピードが出過ぎないように常にコントロールしておく必要がある。また、路面の穴や溝にタイヤをとられたら一発でこけてしまうので、路面状況にも気を配っておかないといけない。

そんなふうにそろそろと下っていると、前方の路肩にクルマが停まっている。男性1名とご両親と思わしき方が2名、景色を眺めているようだ。ゴーっというキックボードの走行音でこちらに気付くと、一瞬ビックリしたような表情をみせたあと、ニッコリ微笑んで会釈していただいた。こちらもニッコリ(疲れていたのでひきつっていたかもしれない)して会釈を返しながら、通過した。バックパックを背負ったおっさんがキックボードで走ってきたのだからビックリされたのだろうが、ニッコリしてくれてとても嬉しかった。やはり旅っていいもんである。

淡路島リベンジ1日目 その2へ続く・・・

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