淡路島リベンジ 2日目 その2

キックボードで淡路島一周の2日目。4時間以上かけて地獄の南あわじを突破し、なんとか2日目での完走に希望が見えてきた。

~これまでの道すじ~
淡路島リベンジ 準備編
淡路島リベンジ 1日目 その1
淡路島リベンジ 1日目 その2
淡路島リベンジ 2日目 その1

絶対絶命のピンチ

時刻は午前9時をまわったところ。左ひざは痛むが、だましだまし行くしかない。我が愛車、マイクロ・ブラックも概ね快調。100kg近い重量に耐え、これまで220km以上走ったのだから、まっぷたつに折れても驚かないが、若干きしみ音がするだけで致命的な異常はみあたらない。さすが、お値段も高いだけあって品質も高い。残すところあと半周、最後まで壊れないように祈りながら走る。

2日目は朝から快晴だったが、9時を過ぎると雲がでてきて風も冷たくなってきた。天気予報でも降水確率は低いが、ところにより雨という予報だったので、雨具は持ってきていない。軽量化のためだ。これが山の中なら、降水確率が低かろうが軽量化だろうが関係なく、雨具は必須装備だが、市街地を走る旅ならずぶぬれになってもなんとかなる。最悪、バックパックに入れているゴミ袋をかぶればいい(見た目は悪いが)。

そのうち、みるみるうちに分厚い雲で空が覆われ、雨が降り始めた。最初はパラパラと小雨程度だったが、徐々に大粒の雨になる。雨宿りする場所もないのでそのまま走り続けるが、ずぶぬれになる前に雨宿りできる場所を見つけた方がよさそうだ。そういえば、キックボードに乗っていて雨に降られたのは、これが初めてである。思ったよりも後輪からのハネ上げが強く、すぐに足首からお尻にかけてビショ濡れになった。ケツが濡れたくらいで弱音を吐けるか!と、必死で走った。

雨のなか、小さな坂を越え、キックボードにはちょうどいい感じのなだらかな下りに入る。それほどスピードは出ていないが、雨のせいでブレーキの効きは悪くなっているだろうから、早めに減速しておこう。右足で軽くブレーキを踏んでみるが、まったく手応えがない。スピードも落ちないどころが、むしろスピードアップしている。もう一度、今度はちょっと強めに踏んでみる。ところがまったく手応えがない!

どうやらブレーキが壊れたわけではなく、雨のせいで摩擦がなくなり、ブレーキが効かなくなっているようだ。自転車でもバイクでも、雨のときはブレーキの効きが悪くなるというのは当たり前である。当然、キックボードでも同様。しかし、キックボードのブレーキは、自転車のようにリムをブレーキシューで挟む構造ではなく、後輪の泥除けを上から踏んづけることで泥除けとタイヤに摩擦を発生させる構造である。少々効きが悪くなったとしても、体重をのせて踏んづければ止まるだろうと考えていた。

これが大間違い。効きが悪いどころか、まったく効かないのだ。慌てて強く踏んづけると、若干効いている感触はあるもののスピードは落ちない。いくらなだらかな下り坂でも、走り続けていればスピードは増す一方だ。このままではヤバい。一瞬、パニックになりかけたが、すぐに持ち直した。

昔、マウンテンバイクで草レースに出ていたころ学んだことは、「スピードが制御できなくなったとき、パニックブレーキ(慌てて急制動すること)をかけたら絶対コケる」であった。何かの本で読んだのだが、パニックブレーキをかけるくらいなら覚悟を決めて突っ込んだほうがケガをする確率は低くなるよ、というものだった。つまり、状況を制御できなくなったとき、パニックに陥れば大ケガをするということだ。もしこの記事を読んでいるバイク乗りの人がいたら、ぜひ覚えておいて頂きたい。

幸いにして、下り坂は続いているが見通しの良い直線でクルマも走っていない。選択肢はふたつ。いまのうちにコケて止まるか、なんとかブレーキを効かせるか。それほどスピードは出ていないとはいえ、大きなバックパックを背負ったままコケるのは避けたい。去年カブでコケたケガが直ったばかりなんだよ! よし、(落ち着いて)フルブレーキをかけてみよう!

思い切って、全体重を右足に乗せ、ブレーキを踏みこんだ(というよりブレーキに乗った)。やや減速したような気はするが、それでも止まる気配はない。今度は左足をボードに乗せたまま、両手でハンドルを押し、右足で思いっきりブレーキを踏みこむ。すると、若干スピードが落ちてきた。左ひざに痛みが走り、ブレーキを押さえつける右足の筋肉が痙攣してきたが、コケるよりはマシだ。

更に踏み続けると、ようやくスピードが落ちてきた。十分減速したとはいえないが、贅沢はいっていられない。すぐにキックボードから飛び降りる。左ひざに激痛が走るが、なんとか踏ん張り、ようやく止まることができてほっと胸を撫で下ろす。まったく油断したとしかいいようがない。なだらかな下りだったからよかったものの、急な下りだったりクルマが走っていたらヤバかったかもしれない。気を引き締めなければ。

懐かしい道をひた走る


なんとか止まれて一安心だが、困ったことになった。この状況では、下りも歩かざるをえない。そうなるとグっと平均時速はおちてしまうが、果たして今日中に岩屋に辿り着けるだろうか。ここまでガンバってきたのだから、なんとか今日中に完走したいものだが、このまま雨が降り続けば無理だろう。

しかも、キックボードに乗り降りする度に左ひざがかなり痛むようになってきた。なんというか、ひざを曲げると関節が痛み、力が入らない感じだ。キックボードに乗っているときは、ひざが曲がらないように脚全体を突っ張らせることで痛みを抑えられるのだが、歩くのがツラい。どうしても左ひざが曲がるので、そのたびに痛みが走る。

せめて天気が回復してくれれば、と思っていたら、西のほうの空が明るくなってきた。雨も小降りになってきている。これはいい兆候だ。どんどん雲が薄くなり、ついには晴れ間が見えるようになった。いつのまにか、雨も止んでいる。降り始めて30分ほどだっただろうか。やはり、バックパッキングの旅は晴れているに越したことはない。

遅れを取り戻すべく、痛む脚で地面を蹴っていると見覚えのある自販機を発見。ようやく、前回ショートカットで飛ばした地点に追いついたのだ。ちょうど休憩の時間だったので、止まって水分補給をする。昨年の淡路島一周でも、この場所で休んだ記憶がある。陽射しを避けるため、自販機の影にへたりこんでいたっけ。今回は、体力の消耗とひざの痛みでへたりこんでいる。前回は、ここからどのくらいの時間でゴールしただろうか? 覚えていないが、まだ先は長いはず。それでも、ゴールに近づいていることが実感できて、嬉しかった。

5分ほど休んで、再スタートする。休憩しているときに痛みはないが、動きだすと左ひざに痛みが走る。同様に、キックボードから歩きに切り替えるときも痛みが激しく、左足をひきずるようにして歩く。完走できたとしても、このひざのケガは尾を引きそうだなと思いつつも、見覚えのあるルートを走るので気分は明るい。

このあたりからは、海岸線と市街地を交互に走ることになる。同じような景色が続くが、それも経験済だ。このあたりから、交通量が増え路側帯が狭くなってくる。スピードの出ないキックボードにとっては、走りやすいとは言えない。特に、ガードレールを隔てて絶壁になっているところでは、ちょっとクルマに引っ掛けられたら真っ逆さまだろう。

路面状況の悪化にも苦しめられた。悪化といっても、若干アスファルトの荒れているだけで、クルマやバイクから見たら普通の道路なのだが、キックボードにとってはツラい。マイクロ・ブラックの大径タイヤでさえ、振動で手が痺れ、全く前に進まないので歩かざるを得なかった。路面さえ良ければかなりの距離を稼げるのに、歩かざるをえないのは精神的にきつい(もちろんひざも痛い)。

そして岩屋へ


午後2時、苦しみつつも、岩屋から約20kmの地点に到達。ようやくここまできたが、安心するにはまだ早い。順調に行けば、明るいうちにゴールできるだろう。ここにきて、前回明石で食べた明石焼きのおいしさが甦ってきた。よし、今回も明石焼きを食べようと心に決め、先を急ぐ。

岩屋に近づくにつれ、ますますクルマが増えてきた。クラクションを鳴らされたりすることは一回もなかったが、遅いキックボードはさぞかし邪魔だっただろう。申し訳ない、と心の中で謝りつつ、必死で地面を蹴る。ときおり路肩に止まって、後続車を先に行かせる。前回、ここまでクルマに気を使った覚えはなかったが、暑さにやられてそこまで気が回らなかったのだろうか。

市街地の軽い上りを2度ほどクリアすると、遠くに明石海峡大橋が見えてきた。あとはひたすら海岸線を走るだけだが、ここで喜んではいけない。まだ10数kmはあるのだ。クルマならすぐだが、キックボードでは2時間近くかかる。浮かれることなく、淡々と進んでいかねば。途中、ハローキティーの頭のかたちをしたレストランを通り過ぎた。前回はなかったと思うが、新しくできたのだろう。結構賑わっているが、私には関係ない。こっちは、写メを撮ってインスタ映えしようという気力も残っていないのである。

さらに必死で走ること1時間少々で、明石海峡大橋に到着! ここまできたら、市街地を少し走ってジェノバライン乗り場に向かうだけだ。岩屋(ジェノバラインの乗り場)までは、前回の記憶ではあっという間に着いたような気がする。ところが、今回は非常に長く感じた。なぜかはわからない。疲れてフラフラだったせいか、ようやく辿り着いたという安堵によるものか。人間の感覚なんて、いい加減なものである。

さらに走ること十数分。5月4日午後4時30分、ついに岩屋に到着! とても苦労したが、なんとか2日でキックボード淡路島一周に成功した。我ながら、よく頑張ったものである。とりあえず切符を買っておこうと見てみると、ちょうど乗船が始まったところだった。慌てて、券売機で切符を購入し、マイクロ・ブラックを折り畳んで船に飛び乗った。

明石焼きを食べ損ねる


15分ほどの乗船時間中、ボケーッと船内のテレビ画面を流れていた。何かの番組録画が放送されていたと思うが、内容は覚えていない。淡路島一周を終えた達成感というよりも、もうこれでキックボードに乗らなくていいという気持ちが強い。明石に着くと、キックボードをケースに入れ、水分補給を済ませてから明石駅に向かって歩き出した。そうだ、明石焼きを食べようじゃないか!

明石といえば、明石焼きである。そして私は疲れ切っており、お腹も空いている。絶対に食べたい。明石駅に向かう途中の商店街には、当然明石焼きのお店が何店かある。有名店っぽいところは、すでに行列ができている。疲れているので行列に並ぶのは無理だが、私には勝算があった。前回の淡路島一周で、帰りに立ち寄った店に行くのだ。有名店のような小奇麗さはなく、小さな駅前のお好み焼き屋さんみたいな感じの店である。あそこなら、行列はないだろう。

痛む脚をひきずってようやくお店に着くと、行列はないものの結構混んでいた。店の前にはファミレスにあるような予約リストが置いてある(前回はなかった)。お客が名前と人数を記入するアレだ。一名だとお店に迷惑かなと思ったが、まだ午後5時である。混んでいるとはいえ、迷惑ということはないだろう。2人席とかあるだろうし、すぐ食って出ていくし。名前と人数(一名)を記入し、少し待っていると年配のおじさんがボードを確認しにきた。

「えーと、マウンテンマンさん、一名と・・・」
「私です。一名なんですけど大丈夫ですか?」
「あー、それが一番困るんだよなあ・・・」

おじさんは渋い顔で店内に戻っていこうとする。私はとっさに「あ、すみませんでした。でしたら結構です。」と叫んで、お店を飛び出した。実際、書き入れ時のお店にとっては、一人のお客は迷惑なんだろう。元気なときなら、「すいません、食ったらすぐ出ますんで!」とか言ってたかもしれないが、この疲れ切った状態ではとても無理だった。かと言って、他の店に並ぶ元気もない。仕方ない、明石焼きは諦めよう。

最後に明石焼きを食べ損ねてしまったが、全体的にみると今回の旅には大満足だった。思わぬ体力不足と、左ひざの不調はあったものの、目標だった2日でキックボード淡路島一周を達成できた。もう一回キックボードで淡路島を走りたいかと言われれば、正直なところ走りたくはない(特に後半ルートは、アップダウンと路面状況がキックボード向きでないのだ)。しかし、だからこそ、限界に挑戦したという達成感を得られたともいえる。

さて、次はなにをしようか。バイク(エンジン付き)で淡路島を走るのも楽しそうだったので、スーパーカブで3周くらいしようか。それとも、キックボードで琵琶湖に行くか。いや、バックパッキングで旅をするのもよさそうだ。とりあえず、左ひざを直してから、ゆっくり考えることにしよう。

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