何年か前、娘が小学生だったころは、よくオートキャンプに行ったものです。当時、焚き火料理がしたくて12インチのダッチオーブンを使っていました。
娘が中学生になってからは、ソロキャンプがメインになり、ダッチオーブンを使う機会も少なくなっていきました。
まさか、バックパッキングに10kgもあるダッチオーブンを持っていく訳にもいきません。新聞紙に包んでケースに入れ、押し入れに放り込んだままになっていました。
ある日、ふと「あのダッチオーブン錆びてるかな?」と思い出しました。最後に使ってから、5~6年は経っています。その間、一度も押し入れから出していません。
ダッチオーブンはとても錆びやすいので、たぶん赤錆で真っ赤になっているでしょう。もったいないことをしたなぁと考えていると、ダッチオーブンで色々な料理を作った思い出が甦ってきました。
ここでお断りしておきますが、私は料理がヘタクソで、ダッチオーブンを使っても失敗ばかりしていました。しかし、その時は懐かしい思い出で補正が入り、おいしい料理ばかり作っていたように思えたのです。
「そうだ、ダッチオーブンでビーフシチューを作ろう!!」
思い立ったが吉日! という訳で、押し入れからダッチオーブンの入ったケースを引っ張り出してきました。恐る恐るケースを開けてみると・・・なんと! ほとんど錆が出ていません! これはラッキーでした。山ほど新聞紙で包んでいたのが良かったのでしょうか。
こうなったら、実行あるのみ。スーパーに出掛けて食材を買い込みます。この時点で21時頃。
「パパ、今からビーフシチューを作るぞ!」
力強く家族に宣言すると、心配そうな視線を無視しつつ調理を始めます。
「まずは、肉を炒めて、それから玉ねぎと人参と・・・ あ、じゃがいも忘れたな。おっと肉が焦げてる!!」
「次は赤ワインと野菜ジュースを入れる・・・ あ、野菜ジュースも忘れた。まあ、赤ワイン1本全部入れといたらいいか」
このあたりで、どうも様子がおかしくなってきました。なにやらコゲ臭い匂いとともに、見た目もよろしくありません。
部屋に漂い始めた異臭に妻が気付きました。
「なんか焦げてない?」
「いや、焦げてないで?(嘘)」
まずい! これは失敗の予感がする! いや待て、まだ諦めてはイカン! デミグラスソースでごまかすんだ! えっと、分量は・・・めんどくさい、全部入れてまえ!!
結局、デミグラスソースではごまかせませんでした・・・ ダッチオーブンの火力で炭化したコゲと、入れ過ぎた赤ワインの酸味が合わさり、なんともいえないエグ味が生み出されてしまいました。
このとき、すでに深夜零時。立ち尽くす私にご飯を食べていない妻と娘が寄ってきます。正直に失敗したと謝ったところ、とりあえず食べてみようということに。
妻「コゲがなかったら何とかなった」
娘「生まれてこの方、こんなマズイものは食べたことがない」
ですよね~ 自分でも食べられないくらいマズイんですから。結局、晩御飯はお茶漬けになりましたとさ。